住宅ローン中の家を売却する際の一括返済手数料はいくら?相場と手順を解説
住宅ローン残債がある家を売却する際の一括返済手数料の相場や手続きを解説します。窓口とネットによる金額差や抵当権抹消にかかる諸費用、売却代金で完済できない場合の対処法まで、失敗しない資金計画の要点を整理しました。

住宅ローンの返済が残っている家を売却する際は、物件の引き渡しと同時に残債を一括返済し、金融機関の担保権である抵当権を抹消しなければなりません。このとき発生する一括返済手数料は、窓口かオンラインかといった手続き方法や借入先によって異なり、無料から3万円前後が一般的な相場です。売却代金でローンを完済する当日の決済手順や関連する諸費用の内訳を正しく整理しておくことで、手元に残る資金を冷静に見極め、無理のない売却計画を立てられます。
住宅ローン売却時の一括返済手数料はいくら?金融機関ごとの相場と内訳
住宅ローンが残っている家を売却する際は、引き渡しと同時に借入金を完済する「一括返済(全額繰上返済)」の手続きを行います。この手続きに伴い、金融機関へ支払う手数料の相場は1万円から3万円程度です。ただし、手続きを行う窓口や借入時の金利タイプによって金額は変動します。
窓口手続きとインターネットバンキングによる手数料の差
一括返済手数料は、手続きを店頭窓口で行うか、インターネットバンキングを通じて行うかによって大きく異なります。一般的な相場の目安は以下の通りです。
手続き方法 | 手数料の相場(税込) | 売却時の適用可否 |
|---|---|---|
店頭窓口 | 16,500円 〜 33,000円前後 | 利用可能(原則として窓口対応) |
インターネットバンキング | 無料 〜 11,000円前後 | 金融機関により売却時は利用不可の場合あり |
通常の繰上返済であれば手数料が無料になるインターネットバンキングですが、不動産売却に伴う一括返済では注意が必要です。売却当日に司法書士が抵当権抹消書類を直接受け取る必要があるため、多くの金融機関では窓口での手続きを求められます。そのため、売却時の手数料は窓口基準の金額で見積もっておく必要があります。
固定金利と変動金利で異なる手数料体系
住宅ローンの金利タイプによっても手数料の設定が異なる場合があります。変動金利に比べて、全期間固定金利や固定金利選択型のローンは、手数料が高めに設定されている金融機関が少なくありません。
固定金利期間中の一括返済では、金融機関側で調達資金の金利再計算や運用の調整が必要となるため、所定の手数料や違約金相当額が加算される仕組みが採用されているためです。なお、住宅金融支援機構の「フラット35」を手続き窓口経由で一括返済する場合のように、手数料体系が独自に定められている商品もあるため、事前に借入先の約款を確認することが欠かせません。
保証料返還時に差し引かれる保証料返戻事務手数料
一括返済時に発生する費用として、見落としやすいのが保証料返戻事務取扱手数料です。住宅ローンの契約時に保証料を一括前払い(外枠方式)していた場合、当初の借入期間よりも早く完済することで、未経過分の保証料が返還されます。
この戻し保証料を受け取る際、保証会社側で計算・振込を行うための手数料として、数千円から1万円程度が返還額から差し引かれます。返還される金額よりも手数料が高くなる場合は差額を請求されないことが一般的ですが、手元に戻る金額を計算する際は手数料の存在を考慮に入れておく必要があります。
住宅ローンを一括返済せずに売却できる?抵当権抹消と売却手続きの原則
住宅ローンが残っている家を売却する際、ローンを引き継いだまま、あるいは一括返済をせずに売却することは原則としてできません。不動産売買の実務において、売主は買主に対して一切の権利制限がない完全な所有権を移転する義務を負うためです。
家を売るためには、引き渡しと同時にローンを完済し、不動産に設定されている担保権を外す手続きが不可欠となります。
抵当権が設定されたままでは買主に所有権を移転できない理由
住宅ローンを契約する際、金融機関は対象の土地と建物に抵当権を設定します。抵当権とは、借主の返済が滞った場合に金融機関が物件を競売にかけ、その代金から優先して貸付金を回収する権利です。
法律上は抵当権が付いた状態でも所有権の移転自体は可能ですが、通常の不動産取引で買い手が付くことはありません。前所有者のローン返済が滞れば、買主は自らの住まいを競売で失うリスクを抱えることになるからです。
項目 | 法律上の規定 | 不動産取引の実務 |
|---|---|---|
所有権の移転 | 抵当権が設定されたままでも名義変更は可能 | 完全な所有権を渡す義務があるため売買が成立しない |
抵当権の抹消 | 金融機関の同意があれば抹消手続きが可能 | ローン残債が全額回収されない限り金融機関は応じない |
買主のリスク | 旧所有者が滞納した場合に物件が差し押さえられる | リスクを回避するため、抹消が売買契約の必須条件となる |
金融機関にとっても抵当権は融資の安全弁であるため、残債が全額回収されない限り抹消書類の発行には応じません。したがって、売却と同時にローン残債を一括返済することが取引の絶対条件となります。
一括返済と同時に行う抵当権抹消登記にかかる登録免許税と司法書士報酬
住宅ローンを一括返済しただけでは、登記簿上の抵当権は自動的に消えません。法務局で抵当権抹消登記を申請し、登記簿から担保権の設定を正式に消去する手続きが必要です。
抵当権抹消登記には、国に納める登録免許税と、手続きを委任する司法書士への報酬が発生します。登録免許税は不動産1個につき1,000円と定められており、土地1筆と建物1棟の一戸建てであれば計2,000円です。私道などの共有持分がある場合はその筆数分も加算されます。
費用の項目 | 金額の目安 | 備考 |
|---|---|---|
登録免許税 | 不動産1個につき1,000円 | 土地1筆+建物1棟の場合は2,000円(実費) |
司法書士報酬 | 10,000円〜20,000円程度 | 書類確認、申請書の作成、法務局への申請代行費用 |
売買当日は、買主からの代金支払い、金融機関への一括返済、そして司法書士による抵当権抹消と所有権移転の登記申請がすべて同じタイミングで実行されます。決済当日のスムーズな進行を確保するためにも、費用の内訳と法的な役割を正しく把握しておくことが大切です。

売却代金で住宅ローンを一括返済する決済の流れと必要な手続き期間
売却代金を用いて住宅ローンを一括返済する場合、引き渡し当日に向けた綿密なスケジュール調整が欠かせません。金融機関や登記を担う司法書士との連携が遅れると、予定していた決済日に引き渡しが完了しないリスクが生じるため、事前の段取りを正確に把握しておく必要があります。
金融機関への事前申し出と一括返済額の確定(引き渡しの1〜2週間前)
不動産の売買契約を締結し、買主の住宅ローン本審査通過などを経て引き渡し日(決済日)が正式に確定したら、速やかに借入先の金融機関へ全額繰上返済の申し出を行います。申し出の期限は金融機関によって異なりますが、引き渡し日の1〜2週間前までに連絡を入れるのが実務上の通例です。
金融機関側では、決済日時点での元金残高、当日までの日割り利息、一括返済手数料などを合算した「完済計算書」を作成します。この書類によって決済当日に口座へ用意すべき正確な金額が確定し、仲介を行う不動産会社や司法書士へ共有されます。金融機関の内部処理や抹消関係書類の取り寄せには一定の日数を要するため、決済日が決まった段階で早急に手続きを進めることが大切です。
決済当日の代金受領・ローン完済・抵当権抹消書類受領の流れ
決済当日は、売主・買主・不動産仲介担当者・司法書士が買主側の指定金融機関などに集まり、すべての手続きを同日中に完結させる「同時決済」を行います。売却代金の受領からローンの完済、権利の移転までが滞りなく連動して進められます。
手順 | 手続き内容 | 主な関係者・役割 |
|---|---|---|
1. 書類確認と意思確認 | 売主・買主の本人確認、登記関係書類の確認 | 司法書士が主導し、登記申請に不備がないか最終確認を行う |
2. 売却代金の着金確認 | 買主の口座から売主の口座へ売買代金の残額を振込 | 買主が振込を実行し、売主側で指定口座への着金を記帳等で確認 |
3. ローンの一括返済と書類受領 | 売主の口座から融資残高と手数料が即時引き落とされ完済 | 借入先金融機関が抵当権抹消に必要な書類一式を司法書士へ交付 |
4. 登記申請と引き渡し完了 | 法務局へ抵当権抹消登記および所有権移転登記を申請 | 司法書士が法務局へ向かい申請、鍵や関連書類を買主へ引き渡す |
司法書士が関係書類を確認したのち、買主から売主の口座へ売却代金が振り込まれます。着金が確認された段階で、売主の借入先金融機関がローン口座から元利金と手数料を即時に引き落とし、抵当権抹消のための書類一式が司法書士へと手渡されます。
書類を受け取った司法書士は、その足で法務局へと向かい、抵当権抹消登記と買主への所有権移転登記を連件で申請します。これにより、代金の支払いと権利の保全が安全に完結します。

売却額で住宅ローンを一括返済できない場合の3つの選択肢
不動産の売却想定額から仲介手数料などの諸経費を引いた手取り額が、住宅ローンの残債を下回る状態をオーバーローンと呼びます。この状態では売却代金だけではローンを一括返済できず、金融機関の抵当権を抹消できないため、原則として通常の引き渡しに進めません。不足する資金をどのように手当てするかによって、主に3つの解決策が考えられます。
選択肢 | 概要 | 主な留意点 |
|---|---|---|
自己資金の補填 | 預貯金等で不足分を決済時に充当する | 手元の流動資産が減少する |
住み替えローン | 残債の不足分を新居のローンに上乗せする | 借入額が増え、審査基準が厳格になる |
任意売却 | 金融機関の合意を得て抵当権を解除して売却する | 信用情報機関に事故情報が登録される |
自己資金や親族からの借入れで不足分を補填する
売却代金で足りない差額分を、預貯金などの自己資金や親族からの資金援助で補填して一括返済する方法です。差額さえ決済当日に用意できれば、金融機関から抵当権抹消書類の発行を受けられるため、通常の不動産売買とまったく同じ手順で手続きを完了できます。
売却後の生活防衛資金を過度に削ってしまわないか、冷静に計算しておく視点が欠かせません。親族から金銭を借りる場合は、贈与とみなされて課税されないよう、借用書の作成や返済実績の記録を明確に残しておく必要があります。
新居の購入とあわせた住み替えローンの利用
自宅を売却して新しい家を購入する計画があるなら、住み替えローン(買換えローン)の利用が視野に入ります。これは、旧居の売却代金で完済できなかった残債を、新居の購入資金用住宅ローンに上乗せして一本化して借り入れる仕組みです。
手元の現金を大きく減らさずに住み替えを進められる利点がある一方、新居の担保価値以上の金額を借り入れる形になるため、金融機関の審査難易度は一般的な住宅ローンより高くなります。借入総額が膨らむぶん、毎月の返済負担や総支払利息が増加するリスクを慎重に見極めなければなりません。
最終手段としての任意売却とその留意点
自己資金での補填が難しく、ローンの継続返済も困難な状況に陥った場合の手段として任意売却があります。これは、借入先の金融機関と事前に協議し、売却代金で完済できない状態であっても抵当権を解除してもらい、一般市場で売却を進める手続きです。
裁判所による競売に比べると市場価格に近い水準で売却しやすい利点がありますが、原則としてローンの返済を一定期間滞納していることが前提となります。そのため、信用情報機関に事故情報(いわゆるブラックリスト)が登録され、今後数年間は新たな借入れやクレジットカードの発行が制限される点には十分な留意が必要です。
一括返済手数料や諸費用を踏まえた住宅ローン売却の資金計画の立て方
住宅ローン返済中の家を売却する際は、売却想定価格の高さだけに目を奪われると資金計画に狂いが生じます。成約した金額がそのまま手元に残るわけではなく、ローンの完済費用や各種手数料、税金などが差し引かれるためです。最終的にいくら手元に残るのか、あるいはいくらの持ち出しが必要になるのかを事前に算出しておく必要があります。
仲介手数料や税金を含めた手残り額の精緻な試算
不動産の売却では、住宅ローンの一括返済手数料以外にもさまざまな諸経費が発生します。計画を立てる段階で、どのような項目にいくら支出が生じるのかを網羅的に把握しておくことが大切です。
費用の項目 | 主な内訳と目安 | 支払いのタイミング |
|---|---|---|
仲介手数料 | 売却価格に応じた成功報酬(法令上の上限額あり) | 契約時および決済引き渡し時 |
一括返済手数料 | 金融機関に支払う繰り上げ完済の手数料(数千円〜数万円程度) | ローン完済時(決済日) |
抵当権抹消登記費用 | 登録免許税(不動産1筆につき1,000円)および司法書士報酬 | 決済引き渡し時 |
印紙税 | 売買契約書に貼付する国税(契約金額に応じた定額) | 売買契約締結時 |
引越し・処分費用 | 新居への家財移動費用、不用品の処分実費 | 引き渡し前の転居時 |
これらの諸経費の合計は、一般的に売却価格の4%から6%程度が目安となります。売却代金から諸経費の総額と住宅ローン残債を差し引き、プラスであれば「手残り資金」、マイナスであれば「自己資金による補填額」となります。手取り額のシミュレーションを精緻に行うことが、安全な住み替えや資産整理の第一歩です。
正確な査定価格をもとにした売却判断と早期相談
精度の高い資金計画を完成させるには、机上の概算相場だけでなく、複数の不動産会社による精緻な訪問査定を受けることが欠かせません。提示された査定額の根拠を比較検討し、市場で実際に成約が見込める現実的な価格帯を把握する必要があります。
査定の依頼と並行して、借入先の金融機関へ現在の正確なローン残債と完済にかかる条件を確認します。売却見込額と残債を早期に突き合わせることで、自己資金の追加充当が必要かどうかの判断や、販売活動にかけられるスケジュールの調整に余裕を持って臨めます。
出典
国税庁 登録免許税 抵当権の抹消 — No.7191 登録免許税の税額表
登録免許税の税率の軽減措置に関するお知らせ
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の取引・税務・法務に関する助言ではありません。制度や税率は改正されることがあります。実際のご判断にあたっては、最新の公的情報をご確認のうえ、宅地建物取引士・税理士等の専門家にご相談ください。


